
脂質異常症は、原因となる脂質の種類や量によって、悪玉のLDLコレステロールが多い「高LDLコレステロール血症」、善玉のHDLコレステロールが少ない「低HDLコレステロール血症」、中性脂肪が多い「高中性脂肪血症(高トリグリセライド血症)」の3つのタイプに分かれます。
以前は総コレステロール値で診断されていましたが、病気を引き起こすのはLDLコレステロール値と中性脂肪の高さ、更に善玉であるHDLコレステロール値の低さも重要視されることから、3つに分類され、1つでも当てはまれば脂質異常症と診断されます。
もくじ
高LDLコレステロール血症
LDLコレステロールは、肝臓から各組織にコレステロールを運び、細胞膜やホルモンの材料になるなど身体に重要な役割を果たしています。ですが、食生活の乱れや運動不足などによって、このLDLコレステロールが多くなりすぎると、余ったLDLコレステロールが血管壁の傷から血管の内側に入り込み、酸化することで動脈硬化を引き起こします。
高LDLコレステロール血症の診断基準は、LDLコレステロール値が140㎎/dl以上ですが、120~139㎎/dlになると、「境界域高LDLコレステロール血症」という予備軍として診断されます。
低HDLコレステロール血症
HDLコレステロールは肝臓や小腸で作られて、LDLコレステロールと対照的に、血管の内側に入り込んだコレステロールを引き抜き、肝臓に運ぶ役割をしています。その為、このHDLコレステロールがうまく働いていれば、血管の壁にコレステロールがたまっても動脈硬化は進行しませんが、食生活の乱れなどからLDLコレステロールが増え、HDLコレステロールが減ってしまう事で回収が追いつかなくなり、血液中のコレステロールが増えてしまいます。
高中性脂肪血症
揚げ物や肉の脂身、糖質やアルコールの摂り過ぎなどの食事をはじめ、運動不足などの生活習慣の乱れが中性脂肪値を上げる原因です。中性脂肪が高くなることで、HDLコレステロール値が低下し、血液中に存在する血小板の血液を固める作用が働くことで、血液がドロドロになってしまいます。遺伝の影響もありますが、それは3~4割程度で、6~7割は食生活などの生活習慣の影響と言われています。
脂質異常症が引き起こす病気

脂質異常症は痛さを感じたり、身体の異変が目に見えたりなどの自覚症状が一切ありません。健康診断などでコレステロール値を測れば数値が異常であることが分かりますが、自覚症状がないため放置されることが多いです。
ですが、放置し脂質異常症が進むと、血中脂質が増え血液がドロドロになり、血管壁を傷つける事でその傷からLDLコレステロールが血管の中に入り込みます。これが原因で動脈硬化が引き起こされると、心疾患や脳血管疾患、脂質のバランスに異常が出ることで腎臓や肝臓まで悪影響を及ぼします。
脳血管疾患
動脈硬化で脳の血管が詰まると、酸素や栄養が届かなくなる脳梗塞が起こります。太い血管が詰まると運動、感覚、言語に障害が出やすく、細い血管が詰まると認知症にもつながりやすくなります。
心臓病
動脈硬化で冠動脈が狭くなり、心臓に送られるべき酸素や栄養が行き届かなくなることで狭心症や、動脈硬化によって出来た血栓で血管が詰まる事で、血が流れなくなり、心臓の一部が動かなくなる心筋梗塞などが起こります。
腎臓病
尿から大量のたんぱく質が出る事で血液中からたんぱく質が減少し、むくみや体重増加が起きるネフローゼ症候群、腎細動脈硬化により、腎臓の働きが落ちていく慢性腎不全などがあります。いずれもLDLコレステロール値や中性脂肪値が高くなることがあります。
肝硬変
肝臓が繊維化(※細胞と細胞とを結びつける繊維組織が増加)して硬くなり、本来の働きが失われていく病気です。脂肪肝から非アルコール性脂肪肝炎を経て、肝硬変になる場合もあります。
脂質異常症の要因は遺伝や体質による「原発性」と生活習慣や病気や薬などによる「二次性」の2つに大きく分けられます。ですが、原因は重なる事も多いので、脂質異常症になりやすい体質の人が生活習慣を乱すことで発症リスクが高まります。